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「あゝ、えらかつたなあ」
「うん、おれもこないだ通り合せたんだが、前を山支度の娘が寵をかついで歩いているんだな、するとやつぱり大声でからかつとつたよ」
「大きに。ありがたうござんす。よろしう頼んます」
「――へえ、まだお帰りぢやないのかね」
「ウシ!ウシ!」
「それあ、あんた」
「先代がぽつくり死にましてね。おかげでこんな所へ引つこむやうになつてしまつたんですが」
と、盛子は大げさに滑稽な顔をしてみせた。
房一は大きくうなづいて見せた。もう獲物は大分前からとまつていた。
日々は平凡に単調に過ぎて行つた。
熱心になっていた「な」の字さんは多少失望したらしい顔をした。
犬は横へとびこんだ。だが、匂も嗅がず、草の中から頭を出して、房一の方をしきりと眺めながら同じ方向に歩いている。